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栄養レシピ&コラム 2012年公開分
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注目の新野菜 アイスプラント

注目の新野菜 アイスプラント

 アイスプラントという野菜をご存知ですか?ここ数年スーパーなどで見かけるようになりましたが、まだまだ目立った存在ではありません。
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 このアイスプラント、とても不思議な野菜です。見た目は緑色の肉厚な葉と茎に、透明でキラキラとした水滴状のツブツブがびっしりとついています。野菜というより何かの植物のようで、始めて見た時はまさか食べられるとは思えませんでした。
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 生でそのまま食べてみると、表面のプチプチと、葉のシャキシャキした食感に加えて、塩をつけているのかと思うほどしっかりとした塩気があります。見た目も味も、これまで経験したことのない野菜に驚きです。
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 どんな野菜か詳しく調べてみると、アイスプラントとは、ハマミズナ科メセンブリアンテマ属の植物で、ヨーロッパ、西アジア、アフリカ原産とのこと。乾燥にとても強く、海水と同程度の塩水の中でも栽培が可能な耐塩性植物。表面の水滴のように見えるものは、体内に侵入した塩類を、隔離するための細胞が発達してできたプラッター細胞と呼ばれるもの。塩のゼリーといったところでしょうか。水滴や氷の粒のように見えることから、通称アイスプラントと呼ばれています。
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 フランスなどでは料理の食材として、アフリカなどでは民間薬やせっけんに利用されているそうです。日本では、塩害対策に役立てようと佐賀大学で研究されたのが始まりで、後にその特徴を生かして特産物にしようと、JAさがと栽培化を進め、平成18年に市場へ登場し、少しずつ各地へ広まっています。
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 注目されるのは、見た目と味だけではなく、その栄養素にあります。カロリーは100g当たり8kcalと低く、βカロテンは926μg(ブロッコリーとほぼ同じ)含まれる緑黄色野菜です。気になる塩分は0.67gと一度に食べる量からすると、そう気になるほどの塩分ではありません。その他のビタミンやミネラルも若干含まれますが、際立って豊富とはいえません。
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 ただ他の野菜にはあまり含まれていない成分“ミオイノシトール”と“ピニトール”を含んでいます。ミオイノシトールは、主に細胞の中に存在し、神経の働きを正常に保ち、細胞内での情報伝達物質として機能しています。中性脂肪を抑える働きがあり、動脈硬化や脂肪肝を防ぐ効果があります。
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 そしてピニトールは、枝豆や大豆、銀杏などに豊富に含まれており、ミオイノシトールとともに細胞膜の構成成分でもあります。脂肪の流れをよくして、体内に溜まりにくくする働きがあります。また血糖値を下げる働きや、肝機能を整える、白内障予防にも効果があるとされます。この両方を含むアイスプラントは、生活習慣病やメタボリックシンドロームに役立つ野菜として注目されつつあります。
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 食べ方としては、食感と塩味を生かして、生のままサラダやピザ、パスタのトッピングなどに。天ぷらにすると、天つゆや塩がなくても美味しくいただけます。また、さっと茹でてゴマ和えやスープの具材にするのもおすすめです。塩味以外はクセが少ない野菜で、加熱するとぬめりが出ます。アイスプラント自体の塩分があるので、調味料は控えめに。水分が多いので、しっかりと重量感のあるものを選び、新鮮なうちに食べきるようにしましょう。
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 アイスプラントの塩分には個体差があり、栽培農家によって塩分濃度が変わってきます。いくつか食べてみると、見た目は同じでも塩気は少しずつ違っていました。塩味以外の味がほとんどしないものや、若干酸味や青臭さを感じるものもありました。
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 水耕、土耕どちらでも栽培できますが、土中に有害な重金属が含まれていると、他の作物よりそれらを吸収蓄積する特性があるので、汚染物質を含まないきれいな土で、無農薬で育てられているものが望ましいです。病害虫にも強く、比較的簡単に自宅で栽培することもできます。ハーブのようにキッチンガーデンで育ててみるのも楽しそうです。
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 ちなみに、アイスプラントという呼び名以外に、各地によってソルトリーフ、クリスタルリーフや、プッチーナ、シオーナなどの名前で呼ばれているようです。今後、珍しさとヘルシー志向から、さらに注目される野菜になるかもしれません。機会があれば一度食べてみてください。