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栄養レシピ&コラム 2012年公開分
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便秘知らずで快“腸”な毎日

便秘知らずで快“腸”な毎日

 突然ですが、あなたは便秘ですか?
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 便秘は一般的には何日も便が出ない状態だと思われがちですが、それだけではなく、排便があっても腸内に残っている感じがする、後で下痢となって排泄されるような場合も一種の便秘であると言えます。現在、日本人のおよそ3割が便秘で悩んでいるとされます。今回は、便秘の原因や解消法について紹介します。
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 私たちが食べたものは、小腸を通過する間に大部分の栄養素が消化・吸収されます。その残りカスが大腸に到達すると、大腸では残った水分の吸収が行われ、便が形成されます。ある程度の大きさを形成した便が大腸の粘膜に接触すると、その刺激で大腸が動き、便が直腸に送られます。直腸まで到達すると、直腸の壁が伸び縮みして便意を感じます。そして肛門の筋肉が緩み、直腸の動きと腹圧(いきみ)によって排便が行われます。
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 しかし、便の材料となる食事や食物繊維、水分の量が少ないと便の量も少なくなり、大腸が便を認識できなくなることで、大腸の排便しようとする働きが鈍くなります。また、食後にトイレに行く習慣がない、便意があるのに我慢するといった習慣が続くと、便を出そうという刺激に大腸が慣れてしまい、便意を感じにくくなります。
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 便秘が続き、便が長い時間腸内にとどまると、水分が過剰に吸収され、コロコロ、カサカサとした便になりやすく、さらに排便が難しくなります。また便から有毒なガスも発生して腸内が荒れてしまい、肌荒れや頭痛などの原因となることもあります。こうなると、便を出すために不適切に下剤を使うことにもつながり、悪循環となります。ほかにも、腸閉塞や大腸がんなどの原因疾患がある場合もあります。たかが便秘と軽視せず、便秘の予防・解消を目指しましょう。
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 では、どうすれば便秘を予防・解消できるのでしょうか?
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 便はおもに水分と、私たちの食べた食事の残りカス、そして腸内細菌によってつくられています。驚くべきことに、便のおよそ3分の1は、もともと腸の粘膜にすんでいた腸内細菌で形成されているのです。私たちの体内には、なんと500~1000種類、数にして100兆個、重さにして約1.5kgもの腸内細菌が存在しており、免疫機能を司ったり、ビタミンなどの栄養素をつくったりしています。また、食事の残りカスというのは、おもに腸内で消化できない食物繊維のことです。便秘解消のためには、これらの腸内細菌と食物繊維の存在が非常に重要です。
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 まず、便秘解消によく効くと知られる食物繊維。食物繊維には、水に溶け、便の水分量をコントロールしたり、腸内環境を改善する水溶性食物繊維と、水に溶けず、腸を直接刺激したり、便量を増やす不溶性食物繊維があります。便秘の予防・改善のためには、一日に男性では19g以上、女性では17g以上の食物繊維を摂取することが望ましいです。野菜類ではごぼうやにんじん、切り干し大根やほうれん草、いも類ではさといもや長いも、そして納豆には水溶性と不溶性のどちらも含まれているため、積極的に摂りたい食材です。
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 ラーメンや丼物、おにぎりなどの単品で食事を済ませるのではなく、野菜や海藻が豊富な副菜を欠かさないようにすることで、無理なく食物繊維を摂ることができます。ただし、さつまいもやかぼちゃは食物繊維が豊富ですが、ガスを発生しやすいため、おなかが張っているときには控えるようにしましょう。
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 便秘解消のためには、腸内環境を整えることが大切です。便秘になると有毒な物質が体外に排出されないため、腸の機能や腸内細菌のバランスが乱れ、さらなる便秘や頭痛、肌荒れ、腸炎などにつながります。腸内環境を整えるのは、ビフィズス菌に代表される乳酸菌で、善玉菌と呼ばれる腸内細菌です。
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 善玉菌は便秘を解消したり、免疫機能を高めてくれます。善玉菌を多く含むのは、ヨーグルトやチーズなどの乳製品、みそやぬか漬け、いま流行りの塩麹などの発酵食品です。また、その善玉菌を元気にするのがオリゴ糖や食物繊維です。一日に1食は、これらの食品を摂り、腸内環境を整えるようにしましょう。
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 食事に加え、正しい排便習慣を心がけることが便秘の予防・解消につながります。毎日なるべく決まった時間に食事をし、朝ごはんを食べたらトイレに行く習慣をつけましょう。また、便意を感じたら我慢せず、トイレに行くことが望ましいです。便意を感じることは、便秘にならないためにとても大切なことです。
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 スポーツの秋、読書の秋、そして食欲の秋。食物繊維の豊富なきのこやいものおいしい季節になりました。腸が喜ぶ食事と生活習慣で、便秘と無縁な体質を目指しましょう。