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栄養レシピ&コラム 2013年公開分
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栄養素を知ろう “葉酸”

栄養素を知ろう “葉酸”

 「葉酸(ようさん)」という栄養素をご存知でしょうか?聞いたことない、あるいは名前は知っているけど・・・という方が多いのでは。知名度の低い葉酸ですが、いま私たちの毎日の健康づくりに役立つ栄養素として注目されています。
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 葉酸はビタミンB1、ビタミンB2など8種類あるビタミンB群のひとつで、ほうれん草の抽出物から発見された栄養素です。1944年に、葉酸が貧血の予防に関わっていると判明しました。貧血というと「鉄」が連想されるかもしれませんが、鉄不足が原因の貧血は、血液の赤血球中のヘモグロビンという物質の不足によるもの。対して葉酸やビタミンB12 は、赤血球そのものを作るのに欠かせない重要な栄養素で『造血のビタミン』とも呼ばれ、不足すると貧血の原因となります。
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 世界的に葉酸が注目されるきっかけとなったのが、葉酸が細胞の遺伝情報であるDNA(デオキシリボ核酸)の形成をサポートする重要な役割を果たしており、とくに妊娠前~妊娠ごく初期の女性に葉酸が不足すると、胎児の先天異常である神経管閉鎖障害の発症リスクが高まることが分かったためです。
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 アメリカやカナダなど世界60カ国では小麦粉に葉酸を添加することが義務付けられ、サプリメントも普及しています。日本でも厚生労働省が、妊娠を希望する女性に対して葉酸の十分な摂取(1日400μg以上)を推奨しています。
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 さらに葉酸の不足は、動脈硬化を進行させる「ホモシステイン」というアミノ酸を血液中に増加させます。血中のホモシステイン濃度が高くなると、血管にダメージを与え、口内炎や肌荒れ、さらには脳卒中や心筋梗塞、認知症を招くことも。まさに心と体の健康を保つために欠かせない栄養素です。
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 ここまで葉酸のはたらきについてお話しましたが、じつは毎日3食バランスのよい食事をしていれば、不足することはありません。しかし、日本人のおよそ15%が、せっかく摂取した葉酸が体内で使われにくい、つまり不足しやすい遺伝子型をもっています。また葉酸は体内に蓄積されないので、動脈硬化などの生活習慣病の予防のためにも、日常的に不足しないよう十分に摂取することが大切です。
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 食品の中では、葉酸はその名のとおり緑色の葉物野菜や花野菜、豆類、果物ならトロピカルフルーツやかんきつ類、肉の部位ならレバーに豊富に含まれます。菜の花、アスパラガス、ブロッコリー、キャベツや枝豆など、旬の野菜を選び、食卓に野菜料理を増やしましょう。
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 水溶性ビタミンである葉酸は、水に溶けやすく失われやすい栄養素です。野菜は生で食べることも大切にしましょう。加熱する場合は、ゆでるよりも炒める・蒸す方が損失が少なくて済みます。溶け出た葉酸が無駄なく摂れるスープもおすすめです。
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 野菜を毎食たくさん摂るのが難しい方は、まず「濃い色の野菜」を意識して食べることをおすすめします。ラーメンなどの単品料理では、五目ラーメンなど具沢山のものを選ぶと栄養バランスも整います。またパセリをみじん切りにして冷凍しておくと、スープなどに気軽に使えて便利です。
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 魚介類ではホタテや牡蠣が葉酸を多く含みますが、焼きのりにも豊富で、そのまま手軽に食べられます。お弁当のごはんに、ふりかけの代わりに焼きのりを乗せ、のり弁当にするのもおすすめです。
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 最近ではスーパーでも葉酸入りの牛乳やお米などが販売されています。サプリメントでも葉酸は補えますが、サプリメントに含まれる葉酸は、食品に含まれるものよりも吸収率が高いため、摂りすぎにはやはり注意が必要です。
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 季節の野菜や果物、レバー、豆類に海苔。葉酸が豊富な食品をそろえると、自然と栄養バランスも整いやすくなります。今日一日、葉酸は足りていますか?毎日の1食1食が心身の健康につながります。