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栄養レシピ&コラム 2015年公開分
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サルコぺニアを予防しよう

サルコぺニアを予防しよう

 サルコペニアという言葉を耳にされたことはありますか?日常生活での歩く、起き上がる、階段を上り下りするといった動作が、以前に比べて少し大変だと感じたり、ちょっとした段差にもつまずくようになった気がする…それらの原因は、もしかするとサルコペニアかもしれません。
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 サルコペニアはギリシャ語で「筋肉」を表すサルコと、「減少」を意味するぺニアを合わせた造語で、筋肉量の減少を意味します。似たような言葉で、ロコモティブシンドローム(ロコモ)がありますが、ロコモは筋肉、骨、関節などの運動器に障害が起き、日常生活に支障をきたしている状態のことで、サルコペニアはロコモの入り口であるといえます。
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 サルコペニアの最も大きな要因は加齢です。筋肉は20歳代後半~30歳代をピークに徐々に減少し、65歳以上で5人に1人、80歳以上で2人に1人がサルコペニアであるといわれています。筋肉量の減少は、まず足から始まり、ちょっとした段差でつまずいたり、転倒しやすくなります。高齢者や骨の弱い人が転倒すると骨折する可能性が高く、要介護状態や寝たきりにつながるケースも多いので、高齢化が進む日本では深刻な健康問題といえます。特別な疾患ではなく、誰にでも起こりうる症状です。
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 では、あなたがサルコペニアかどうか、チェックしてみましょう。

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 (1)椅子から片足を浮かした状態で立ち上がり、立った姿勢を3秒間維持できない
 (2)片足立ちを1分間続けられない
 (3)片足立ちで靴下が履けない
 (4)横断歩道を青信号で渡りきれない

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 この中で1つでも当てはまった方は筋肉量の減少が疑われます。1つでも当てはまった方の中で、体組成計がある場合は、筋肉率が男性27.3%未満、女性22.0%未満に当てはまるとサルコペニアが疑われます。
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 また、最近では『サルコペニア肥満』も注目されています。サルコペニア肥満は筋肉量が減少したサルコペニア状態に加え、栄養過多などの原因が重なって脂肪が増えている状態のこと。高齢者だけでなく、中高年にも起こるのが特徴です。30代を過ぎた女性の10人に1人がサルコペニア肥満であるとする研究もあります。特に、若いころに食事制限によるダイエットを繰り返した人は、脂肪よりも筋肉が減って基礎代謝が落ちているため、たとえ食事内容が変わらなくても脂肪が蓄積し、サルコペニア肥満のリスクが高まります。サルコペニア肥満の人は、そうでない人に比べて糖尿病のリスクが19倍にもなるといわれているため、改善が必要です。
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 サルコペニアへの対策はやはり運動、そして食事です。とくに行いたいのは筋肉トレーニングです。これまでは高齢者は鍛えても筋肉が増えないといわれていましたが、近年の研究で、何歳になっても筋トレをすることによって筋肉の減少を抑えたり、増加に役立つことがわかっています。歯磨きや新聞を読みながら、つま先たちやスクワットをしたり、椅子に座った状態でもも上げをしてみるなど、体に少し負荷をかけてみましょう。また、エレベーターでなく階段を利用する、駐車場でなるべく出入り口から遠くに車を停め、歩く距離を増やしてみるなど、できる範囲で運動量を増やしてみましょう。筋肉が衰えている人ほど効果が出やすいので、効果を実感できるはずです。
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 運動とともに重要なのは食事です。とくに重要なのは、筋肉の材料となるたんぱく質です。たんぱく質は肉や魚、大豆、卵などに含まれます。体内ではたんぱく質の合成と分解がつねに行われています。体の中のたんぱく質量を保つためには、毎日の食事で不足しないように摂取することが大切です。高齢者は若い人に比べて筋肉の分解が起こりやすいため、より一層気を付ける必要があります。
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 たんぱく質は自分の体重1kgあたりたんぱく質1~1.3g以上を目標に摂取しましょう。体重50kgの人なら、1日50~65gとなります。これは、毎食お茶碗に軽く1杯のごはんと、肉や魚、卵や大豆製品などのたんぱく質が含まれる主菜をとることで自然にとれる量です。加えて牛乳やヨーグルトなどの乳製品は、たんぱく質だけでなく、骨を丈夫にするカルシウムも豊富なのでおすすめです。
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 糖尿病などの生活習慣病やがんへの関心は高まっていますが、筋肉量や運動機能は見落とされがちです。加齢は避けられませんが、運動習慣や食事の改善などの予防で筋肉の減少は確実に遅らせることができます。介護や寝たきりはまだまだ先の話…と思わず、元気なうちから生活習慣を見直して、寝たきりにならない体づくりを始めましょう。