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栄養レシピ&コラム 2017年公開分
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甘酒が注目される理由

甘酒が注目される理由

 毎日暑い日が続いていますが、年々その暑さが増しているように感じられます。ここ数年、夏バテによいと甘酒が注目されています。甘酒と聞くと、ひな祭りや寒い季節に飲むイメージがありますが、江戸時代には夏になると、甘酒売りと呼ばれる人が「甘酒~甘酒~」と売り歩いていたそうです。栄養価の高い甘酒は、夏の暑さをしのぎ、疲労回復、栄養補給のための飲み物として親しまれていました。
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 甘酒には「麹甘酒」と「酒粕甘酒」の2種類があります。麹甘酒は米麹(蒸した米に麹菌を散布して繁殖させたもの)に、ごはんと水を混ぜて発酵させたもの。米麹に含まれる酵素が、米のデンプンを糖化させて甘味を作り出します。発酵によって米のデンプンやたんぱく質が分解され、消化吸収のよい糖とアミノ酸になります。さらにビタミンB群が生成されて増えるので、疲労回復に効果があります。糖分の約80%がブドウ糖、20%がオリゴ糖です。オリゴ糖は腸内で善玉菌のエサとなり、腸内環境の改善に役立ちます。消化吸収がよいので、胃腸の調子が悪いときや、早く糖分を補給したいときは麹甘酒がおすすめです。砂糖を加えない自然の甘さを感じられます。
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 一方、酒粕甘酒は日本酒を作るときにできる酒粕に、水と砂糖を加えて加熱したもの。食物せんいが豊富なので、整腸作用やコレステロールを吸着、排泄する効果が期待できます。貧血予防に効果のある葉酸や、ビタミンB6も多く含んでいます。また酒粕に含まれるコウジ酸には、メラミンの生成を抑制し美肌、美白効果があります。酒作りをする杜氏の手が綺麗といわれるのも納得ですね。砂糖を加えるのでカロリーはやや高めですが、アルコール分を少量含むので体が温まります。ただし、子どもやアルコールに弱い方、運転をする時には注意をしましょう。
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 このように甘酒にはたくさんの成分が含まれており、栄養点滴の成分とほぼ同じことから「飲む点滴」と呼ばれるほどです。購入の際には、原料が麹か酒粕か、無糖か加糖かなど、パッケージを見て選びましょう。
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 ここで甘酒の作り方を簡単に紹介します。麹甘酒は、ごはん1に対して3倍の水を加えて65℃位まで加熱します。ごはんと同量の米麹をほぐして加えて混ぜ、60~65℃位を保ちながら8~10時間おくと発酵して出来上がります。温度を保つには炊飯器の保温モードや、少量なら魔法瓶を使うと便利です。時々かき混ぜながら70℃を超えないように温度調節をして、出来上がりを待ちます。70℃を超えると酵素が失われて甘味が出ず、発酵し過ぎると酸味が出てしまいます。温度と時間の管理が少し難しいですが、最近の甘酒ブームで、米麹もスーパーなどで手に入れやすくなったので、ぜひ手作りにも挑戦してみてください。
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 酒粕甘酒は、酒粕を水に浸けてふやかし砂糖を加えて加熱、混ぜながら酒粕が溶けるまで温めます。好みで塩少々としょうが汁を加えます。温めて飲むときは、ビタミン類が熱に弱いので、どちらも温め過ぎに注意し、ひと肌程度にしましょう。
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 甘酒が苦手な方や子どもには、好みの果物やフルーツ缶詰と一緒にミキサーにかけたジュース、あるいは凍らせた果物をミキサーにかけたスムージーが好まれます。また、甘酒と牛乳(または豆乳)を1:1で混ぜると飲みやすく、凍らせてシャーベットにすると、優しい甘味のおやつに早変わり。
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 甘酒というと、田舎の曾祖母の家で飲んだ記憶が思い出されます。幼い子どもには、あまり美味しいものではなかったような・・・最近、甘酒が注目されるようになり、久しぶりに飲んだ麹甘酒は、ほんのり甘くてとても美味しかったです。もしかしたら甘酒は大人の飲み物なのかもしれませんね。暑さによる疲労もピークを迎えるこの頃、甘酒を飲んで残暑を乗り切りましょう。