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栄養レシピ&コラム 2017年公開分
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食卓の味方 サンマ

食卓の味方 サンマ 

 スポーツに芸術、勉学などに最適な季節になりましたが、なんといっても食欲の秋ですね。サンマ、きのこ、さつまいも、栗、梨、柿・・・と、美味しいものがたくさんあるなか、今回はサンマに注目してみました。
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 サンマは良質のたんぱく質や脂質、ビタミンなど多くの栄養に富んでいますが、なかでも注目されるのが不飽和脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)です。EPAは血液をサラサラにし、コレステロール値を下げる働きがあります。また糖尿病の合併症の予防や、炎症を鎮める作用、抗腫瘍作用も期待できます。DHAは中性脂肪や悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす効果があります。さらには脳細胞の働きを活発にし、記憶力の向上や老化防止、認知症予防に効果があると注目されるようになったのは、ご存知の方も多いと思います。
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 さらに皮膚や粘膜を健康に保つビタミンA、カルシウムやリンの吸収を助け、骨を丈夫にするビタミンD、血流の改善や過酸化脂質を防ぐビタミンEをはじめ、ビタミンB2、B12、ナイアシンも含まれています。その他にもカルシウムや鉄分、肝機能を高めるタウリンなども含みます。
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 これら多くの栄養素は身だけでなく、皮や内臓(ワタ)にも多く含まれています。サンマは内臓を食べられる数少ない魚ですが、サンマの内臓は一本の消化管があるだけで、消化が早く排泄物などが残らないため食べることができます。新鮮なサンマのほろ苦いワタもまたサンマの魅力です。
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 いつでも手軽に食べられて便利なサンマ缶は、加熱してもEPA、DHAの損失が少ないので缶詰でもしっかり摂れます。骨もやわらかくなっているのでカルシウムも豊富、鉄分やビタミンDは生よりも多く含まれます。缶汁にも栄養が溶け出しているのでいっしょに食べるようにしましょう。
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 サンマを選ぶときのコツは、全体が太めで張りと光沢があり、黒目の周りが澄んでいるものを。頭から背にかけて厚みがあるものは脂がのっています。口と尾が黄色いものは美味しいとされる説もあるようですが定かではありません。刀の様と表現されるように、尻尾をつかんで持ち上げると、やや身が反るように一直線にピンと立っているのが新鮮な証拠です。
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 脂がのっている分傷みやすいので、できれば買ったその日に食べたいですね。包丁の背で軽くなぞって残っているうろこを取り、軽く水洗いして水気を拭きます。塩を振って15分程度おくと表面に水分が出てきます、これが臭みの原因になるので、拭き取ってから調理します。下処理をきちんとすれば、さらに美味しく食べられます。保存するときは冷凍をおすすめします。頭と内臓を取って水洗いし、水気を拭き取り、ぶつ切りや三枚おろしにしておくと調理しやすくなります。
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 昨年は不漁といわれましたが、残念ながら今年はさらに下回るのではと心配されています。8月下旬から始まった漁では、サンマの南下が進まず不漁なうえに、小ぶりなものが目立っているそうです。小ぶりなため、サンマ定食の値段を下げたり、販売を休止したりする飲食店もあると報道されていました。
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 不漁の原因ははっきりとはわかりませんが、海の環境などの自然要因に加えて、ここ数年台湾や中国、韓国などが大量に捕獲していることが一因といわれています。かつては日本が漁獲量1位でしたが、現在は台湾が1位になっているそうです。価格も安くて美味しいサンマは、日本の庶民の味として親しまれてきましたが、そう遠くない将来とても貴重な魚となるかもしれません。この秋は美味しいサンマをどのくらい食べることができるのでしょうか。